びたーえんど

眠らなければずっと日曜日

【後半ネタバレあり】ChronoBox 感想、評価、考察

 
※リンク先R-18注意 
 
知り合いがおすすめしていたので前から気になっていた作品。
購入して帰宅後にインストール→プレイ→翌日会社から帰る→ずっとプレイ…といった具合で2日間で完走。
振り返りながら考察(妄想)なんかも入れつつ行きます。
 

■プレイ前の印象

以前Web体験版をプレイしていて思ったことは、新規層を狙いつつも中々凝ってるゲームだなぁという印象だった。
スマートフォン上でも動く体験版っていうのは中々斬新で、
正直エロゲ業界(というよりは声付き紙芝居というフレームワーク)って進化しようが無いじゃないですか。
昔と違って若年層オタクはPCが無くてもスマートフォンとyoutubeでゲーム実況見て満足するような世界なわけですよ。
仮にエロゲに興味があってもOPムービーをyoutubeで見て気になった作品のHPを見たら体験版が配信されてる事を知ったとしても
「体験版を遊ぶためのPCが無い」ってなるし、古いオタクですら「PC起動して体験版インストールしてゲームやるの面倒くさい(スマホで日常生活を送っているため)」ってなるわけですよ。
それがこの作品の場合はWebブラウザ上で体験版が遊べるんです
これって本当にすごくて、ここで体験版やって内容が良ければ「やっぱ面白いわ、久しぶりにPCでエロゲやるか」ってなるわけですよ。
 

★評価点

■露骨な伏線の匂わせ方

いやだってもうホームページのキャラ紹介からして、見るからに伏線だらけだもの。
「キャラに振られてる番号なんの法則性があるんだ?」「こいつ死にそう」「うーわこのセリフ意味深」「なんで教室の窓に鉄格子があるの?」「自室にスピーカーって何さ」「霍かわいい」etc...
みたいな事を思いながらプレイする事になると思います。
制作者も公言してますが、作中の謎は8~9割方回収されるうえに比較的速読気味にプレイしてる自分ですら
重要そうなポイントをしっかりと抑えていればわざわざ振り返らずとも一週目で"すとん"と落ちてくる清々しさがあります。
また、伏線ではなく物語の進行上「ん?どういうことだ?」と思った部分が比較的早めの段階で回収されるので
疑問を頭の片隅に抱えずとも、点と点が即座に繋がり物語に集中して次の疑問点や伏線へ集中出来るのがとても良かったです。
これが、トーリー全体のテンポを良く感じた理由の一つなのかもしれません。
ちなみに若干の謎が残る部分はありますが、物語の根幹に関わるクリティカルな投げっ放しな感じではないのでそこも良い点だと思います。
本来の意味での「ユーザのご想像にお任せします」というやつだ。

 

■シナリオ進行中の気持ち良さ

人間って成功体験があると気持ちいいんですよ。
例えば根拠を持ってクイズに答えて正解すると嬉しいじゃないですか。
この作品はそういう気持ち良さが各所にちりばめられてて、かつ短いスパンで何度も味わえるんですよ。
なんですけどね、この作品の秀逸なところは企業のキャンペーンクイズみたいな「あからさまに答えが分かる」ような感じのものではなくて「自分の察しがいいから察せた」ように錯覚出来るんですよ。
自分で謎に立ち向かってる感覚が積み重なると0%だった情報が10%、20%と徐々に積み重なっていくんですが、どう頑張っても終盤までは60%止まりになってしまう。
そして憶測で80%(仮)まで持っていったところで答え合わせをすると気持ちよく90~95%の正解にたどり着けるわけです。
 

■エロい

エロい、予想以上にいろんなシチュエーションが用意されていてすべての性癖をカバーしているのではないかというレベル。
シナリオ重視のエロゲってわりとエロシーンに力入ってなかったりする事が多いんですが、普通にこっちメインって言われてもおかしくない(※本来エロゲとはこういうものです)
ただ行為中の会話やCGにも伏線があったりするのでたまに集中して読まないと損をする場面もあるので要注意。
 

■グロい

グロい、耐性が無いから余計にキツかった。
グロいの種類にも色々あると思うんですが、「露骨にグロいタイプ」と「エグいタイプ」の「グロい」が両方混じってて相当きつかった、一部のシーンは目を背けながらプレイしてたくらい。
好きな人にはたまらないのかな…(そういう趣向が無いからわからない)
 

★悪かった点

■マップ選択のインタフェース

マップ選択のインタフェースが分かりづらい…というよりは直観的ではない。
恐らくスマートフォンの操作でスワイプした時の動きを想定したと思うのだが、
実際の本編はPC上で動くため右の矢印を押下したら右側に遷移するのが自然だと思う。
この部分は本当にストレスだった。
 

■日常パートの掛け合いが一部メタくて寒い

あまり多くは言わないけど自分はかなり寒く感じた(しかも結構な頻度で似たようなやりとりがある)
 
 
続きから考察(ネタバレ注意)

 

 --- ここからネタバレ ---
 
大多数のプレイヤーがした考察(TRUE END後の那由太の結末、SEIとか)は先人たちが丁寧に紹介しているので、自分なりに気になった細かい部分を考察していきたいと思います。
 

■メッセージウィンドウ上でのEDEN、EdEn表記揺れ

これは最初のうちから結構目にしているけれど、どういう理由があるのかなーとプレイし直してみた。
結論としては「ギフトを失った後の主人格」しかEdEn表記で発言をしなかった。
例えば、序盤で天美を失ったフーカは海の見える公園で「EdEnの制服より~」と言っている。
終盤になると大体の主人格がEdEn表記で発言をしているが、ギフトであるメガや先輩、霍などは最後までEDEN表記だった。

■ログワールド内での天美の正体

天美は偶数番号のギフト勢でも特殊な部類で(体験版を除けば)ログワールド内で唯一、単独で那由太と恋仲として結ばれた人物である。
作中でただ一人「いい思い出だけ」が残ったキャラクターといえる。
しかし、ギフトの凶暴性を抑えたログワールド内とはいえ天美は果たしてEdEnで樺音を虐めたあのフーカのギフトだったのだろうか。
まずは情報の整理をする、「現実世界でフーカのギフト」と「ログワールド内での天美」が別であるか、同一であるか。
 
 
【前提】
・ログワールド内の姫市天美はギフトである(被験者番号が偶数番号)
 
【別である根拠】
・「私の本当の主は~」というフーカの発言
・樺音のセリフと一字一句同じ内容の手紙
 
【同一である根拠】
・黒い箱を所持していて、その中身は「皆で食べた食べ残し」であるという発言
・屋上で見つけたはずの黒い箱を無かったと虚偽の報告をしたフーカ

 

ここで注目すべきは「樺音のセリフと一字一句同じ内容の手紙」「食べ残し発言」である。
前者は那由太しか知りえない情報で、後者はギフト化したフーカしか知りえない情報である。
 
先ほどから「天美」「ギフト化したフーカ」を分けているが、これにも理由がある。
終盤、現実世界のEdEnで雫流がこの施設のシステムについて語るシーンがあり
奇数番号の主人格とその一つ後ろの偶数番号がギフトでる旨の発言をしている。
しかし、彼女は「フーカ・マリネット」のギフトの名前が「姫市天美」であるとは明言していない。
あくまで「フーカ・マリネット」はブルーメシンドロームの患者でギフトを所有している、までしか確定していないのだ。
だからフーカはログワールド内で「私の本当の主は~」という発言をしているのではないだろうか。(※1)
 
「フーカのギフト」≠「ログワールドの姫市天美」を決定づけるにあたってネックなのは「黒い箱の中身は食べ残し」発言である。
ギフトに成り代わっている間は記憶を保持出来ないが脳には記憶が残っており、これは恐らくフーカの脳の記憶からサルベージしたものであろう。
 
ここで、フーカがブルーメシンドロームを発症した要因となった事件を思い出してみよう。
フーカは外国の出生で、そこで誘拐された際に犯人同士が揉めてお互いが死亡しその光景を目の当たりにした後に救助された。
このエピソードで不自然な点があることに気づいただろうか。
そう、フーカは外国の出生かつ目の当たりにした犯人も日本人ではないである。
フーカのギフトが和名であることは不自然極まりないうえ、天美に死亡した犯人のモチーフ(ブルーメシンドロームの特徴)も見当たらない。
つまり、ログワールド内の天美はそもそも現実(EdEn)に存在したギフトであるかどうかも怪しいのである(「本当の主は~」発言はここに繋がるのだろう)(※1)
 
では最後の食べ残し発言だが、これについては「フーカの脳からサルベージした記憶」という部分に注目する。
食事会の食べ残し、つまりは樺音の頭部を食べたという記憶。
ここで一つ仮説を立てる。
それは、『樺音を体内に取り入れた事で、樺音の記憶や想いを引き継いだ可能性』だ。
これを裏付ける根拠は2つ。
・テオドールベクトルはギフトにのみ作用する
・樺音のセリフと一字一句同じ内容の手紙
1つ目の根拠についてはフーカ以外の4人にも適用されていて
同性愛者の猶猶以外は明確な好意を持ってログワールド内の那由太に惹かれていた。
例外の猶猶もそういった背景があるにも関わらず「大好きな友人」として接していた部分がテオドールベクトルの作用なのではないだろうか。
テオドールベクトルが主人格にも作用した可能性はないだろうかと考えたが、
もしそうであればEdEn内で主犯の5人と同じようにが那由太に対してなんらかのコミュニケーションを取りに行くはずで
雫流の那由太に対するカウンセリングシーンにおいて、既にギフト化した5人以外から話しかけられたという描写は無かった。
これが先述したログワールド内で主人格が好意を持って那由太に近づいた事への裏付けにもなる。
天美の笑顔から連想される樺音の面影も、樺音の残滓が那由太の記憶を刺激した結果なのだと思う。
 
 
……と、ここまで書いたはいいものの天美にはまだ謎が多く裏付けが取れていなかったり、上手く言語化出来ていない要素がある。
・何故黒い箱を所持していたのか(かつ常に携帯していたのか)
・何故黒い箱を無くしたのか
・黒い箱を探索中にフーカが屋上で「箱は見つからなかった」と言った理由
この辺は考察サイト回ったり、自分なりに考えがまとまったらまた書きたいと思います(書くとは言っていない)
 
 
■最後に
とても久しぶりにエロゲをやったけれど、非常に楽しめた作品でした。
EdEnに戻った時の表情のスクリプトとか考えるだけでしんどそうだなぁとか、伏線の回収の仕方がとても綺麗だったなぁとかまだまだ語りたい事がいくらでもあるんですが……。
個人的に一番の評価点が
 
全体を通してよく作り込まれていて
バグも少なく
一度も延期をせずに、きちんと発売予定日に発売をしている事
 
この辺ってエロゲ業界では当たり前すぎて感覚が麻痺しがちなんですけど、自分たちの作品に対してとても誠実なことって本当に大切だと思います。
開発スタッフの皆さんやプロジェクトマネージャーが優秀なことが伺えますね……。
 
次回作も期待しています!
 
 
(※1)訂正
現実世界でフーカのギフトの名前は天美であると明言されている。 外国の出生であるにも関わらず和名のギフトである事に対する違和感はあるものの、同一の名前のギフトが存在したことは確かであった。Twitterでのご指摘ありがとうございました!