びたーえんど

眠らなければずっと日曜日

自炊0でも出来る外出自粛期間中のズボラ飯構築

レギュレーション

  • 都内一人暮らし*1
  • 外出するのは週に1~2回
  • 外出頻度を減らすため日持ちを優先*2
  • 買い物は家から一番近いセブンイレブンを利用
  • 極力洗い物を増やさない
  • 食事に飽きが来ないようにする
  • Amazon、UberEats使用可

あらすじ

現在業務委託契約している会社でもリモートワークが始まり、緊急事態宣言とともに外出・営業自粛の空気が漂い始めた頃。ここ数年は外食・内食メインの食生活をしていた自分にとって毎日の食事が直近における最大の課題となった。極力外出を避けたいが、生鮮食品を買いだめするのは賞味期限や調理の手間を考えるとあまり現実的ではないため却下。コンビニの弁当や麺類を毎日買いに行くのでは外出自粛の目的としてあまり意味がない…となればある程度日持ちのする惣菜を買い込むのが一番楽なのではないかと思い今回の構築を思いついた。

良かった商品たち(セブンイレブン編)

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銀鮭の塩焼 278円(税込300円)
まずはこれ、これに限らずセブンイレブンの魚惣菜は基本的に骨を抜いてあるためストレスフリーにキレイに食べきることが出来るため体験がとても良い。味も良く、トレーが付属されているため電子レンジに入れて温めればそのまま食べることが出来る。朝食から昼食、夜の晩酌にも使える汎用性の高い商品。それなりに日持ちもするので買いだめもOK。

また、同じくセブンイレブンに売っている

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国産大根おろし 138円(税込149円)
何かと便利シリーズその1。こちらの商品を使うとより食事が"それっぽく"なる。セブンイレブンで売っている卵焼きやうどん、そばなどのトッピングにも出来るためこちらもまた汎用性が高い商品と言える。
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さばの味噌煮 198円(税込213円)
魚惣菜の中では個人的にこれが一番美味しかった。値段もトレーがない分安く、皿を洗う手間は増えてしまうがそれ見合うコストパフォーマンスを持っていると言えるだろう。
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8品目うの花118円(税込127円)
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きんぴらごぼう 118円(税込127円)
メイン料理だけだと飽きてしまうため付け合せが欲しくなるのが人間の性、生野菜と違って日持ちがする事、和食なので魚惣菜と強力なシナジーが発生する。
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フリーズドライ みそ汁 とうふ 88円(税込95円)
コンビニあんまり関係ないのかもしれないけれど、一番感動したのはこの商品かもしれない。最近のフリーズドライの味噌汁ってこんなに美味しいんですね、普通のインスタント味噌汁より具材の種類も豊富(他にもネギやナスなど)なので飽きが来ない。自粛期間中のコンビニ飯でも一汁一菜*3を守れば食事が楽しくなるんだなと痛感しました。
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和風ハンバーグ 198円(税込213円)
魚が好きなのであまり肉を食べないのですが肉惣菜だとこれが美味しかった。肉汁がじゅわっと広がり付け合せの和風ソースも非常にマッチしている。先に紹介した大根おろしをかけても美味しい。
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ナポリタンスパゲッティ 238円(税込257円)
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ボロネーゼスパゲッティ 238円(税込257円)
冷凍食品部門ではこいつらが優勝、とにかく単体性能が高くサクッと食事を済ませたいときにチンしてそのまま食べてすぐに捨てて仕事に戻れるのは強い。味もかなり美味しい、ナポリタンがお気に入り。
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トッピング用温泉たまご 1個 50円(税込54円)
何かと便利シリーズその2。人間卵食っておけば大体なんとかなるので2〜3個常備しておくと強い。トッピング用と名の通りレトルトカレーだったりそばうどんだったりなんにでも使える。
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沖縄県産もずく 178円(税込192円)
これは食事というより晩酌によく使う、トレーがついているので洗い物する必要が無いのは便利。さっき紹介した温泉卵を混ぜても美味しい。いつも蓋を開けて口をつけてそのまま食べて*4います。
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手羽中唐揚げ 238円(税込257円)
同じく晩酌用、ホットスナックをわざわざ買いに行かなくても美味しい手羽の唐揚げが食べれるのは強い。ビールにもハイボールにも合う。
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スモークタン 75g 200円(税込216円)
日持ちがするのにナマモノ感を味わえるおつまみ、最高。

良かった商品たち(Amazon編)

フリーズドライの味噌汁が美味しいことがわかった瞬間これを注文しました、セブンイレブンのものと同等に美味しく毎日違う味を楽しめるので大満足です。定価だと6,000円ほど、一食200円くらいの計算。レンチンのみで牛皿が用意できるスグレモノ。普通にパックのご飯にぶっかけて牛丼にするもよし、晩酌として牛皿にするもよし、うどんにかけて肉うどんにするもよしと汎用性の塊。

備考

  • 食料を常備をすると、食事の選択肢が広がるぶん献立を考えるのが面倒になる。おすすめの方法は賞味期限順に食べる事。何も考えずとも食料を無駄にせず、ある程度毎回違うものを食べることになる。
  • 週1〜2にはなるが、せっかくセブンイレブンに買い物に行くのだからその日か次の日までに食べる生鮮食品はもちろん買うべき。枝豆や生野菜、冷蔵のそばうどんあたりがそれに当たる。
  • 適当なパックのご飯を必ず常備しておく、そのまま捨てられるので炊飯器・茶碗の洗い物の必要が無い。
  • 箸は割り箸で十分、むき身で大量に入ってるやつが100均で売ってるし惣菜を買い込めばコンビニでも貰える。
  • フリーズドライ味噌汁を飲むためお椀一つだけは洗い物が必要になる、食べたらすぐ洗うことでストレスを先送りにしないようにする。
  • 当たり前過ぎて書かなかったがカップ麺類はいくつか常備しておいて損はない、何もかもが面倒なときにサクッと食べる用に。
  • UberEatsは割高ではあるが、自粛期間中でも外食の味を楽しめるツールとして「ご褒美」という位置づけで使うと良い。*5

*1:キッチンスペースが狭く自炊に向かない

*2:足がはやい惣菜は極力避ける

*3:今は一汁二菜にしている

*4:飲みこんで

*5:在宅勤務だとストレスが溜まるので「ご褒美」として週に1〜2回は使っている(このおかげで結構救われている部分もある、配達員の皆さんいつもありがとうございます

【ネタバレ注意】ペンギン・ハイウェイの感想と考察

(※本記事には下記の作品のネタバレが含まれます。)
・ペンギンハイウェイ
不思議の国のアリス鏡の国のアリス
また、原作未読・映画から読み取れる事のみを判断材料とした考察ですのであしからず。

 

有頂天家族四畳半神話大系夜は短し歩けよ乙女を手掛けた森見登美彦原作のアニメ映画。
事前情報無しで観に行ったのですが、幼少~少年期の青春エンタメかと思いきやファンタジーやSF、カタルシスを孕んだ非常に面白い作品だった。

 

お姉さんとアオヤマ君を中心とした人間模様もさながら、ウチダ君やハマモトさんたちと共に知らない世界や謎を自分たちの手で解明しよう、疑問に思った事をそのままにせず自分たちなりの答えを見つけようとする姿勢は、私たちが彼らと同じ年齢だった頃に初めて触れた理化学のドキドキを思い出させてくれるような気持ちになった。

 

お姉さんはTwitterで誰かが言っていた「近所のお姉さん」という概念の集合体のようなキャラクターだった。ラストシーンで世界から退場する「絶対に手が届かない憧れの人」という表現が、幼少~少年期の家族以外の女性に対する憧れや儚さを上手く表現出来ていて良いなと思った。

 

また、アオヤマ君の「おっぱい」に対する執念は純粋な疑問や興味の対象としてトップレベルにあるというところがポイントで、自分の研究対象としての謎を持つお姉さんを魅力的に感じる事から恋愛感情と勘違いしていたのではないかと思われる。
恐らく、お姉さんの部屋でチェスをしている最中に寝落ちするシーンで初めて「おっぱい」以外の部分で女性としての魅力(=本能的に遺伝子に刻まれているフェロモン)を認識して成長をしたのではないかと思われる。ただし、これも恋愛感情ではなく、もっと単純な家族以外の異性に対する魅力*1を認識したという所だと思われる。

 

そう考えると、お姉さんに危害が及ぶから≪海≫の研究を放棄したいと言ってハマモトさんがキレたシーンにおいても、ハマモトさん視点ではアオヤマ君がお姉さんを好きだからかばっているように見えたかもしれないが、実際は自分の大切な研究対象を他人に奪われたくない(=恋愛感情ではない)という気持ちから出た発言だったのではないか?と考えられるのも面白いと思う。

 

プロローグのアオヤマ君の口上、エピローグで対になっていて「もう結婚はする人は決めている」のところでハマモトさんの笑顔のカットが入るのも最高だし、「教えてあげたいお姉さんの事をどれだけ好き"""だったか"""を」って過去形な所も最高、うるせえ私はこういうオタクだ。

 

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で、こっからは考察で自分の中で疑問に思った点や、違和感についてまとめたいと思う。
まず、この作品を語る上で外せないのが「鏡の国のアリス」という物語だ。

 

作中に登場する「チェス」、「ウロボロスな世界」、「ジャバウォック」、「理不尽な問いかけ」、「絶食しても生存するアリス」、などはすべて「鏡の国のアリス」に登場する要素である。


作中、小学四年生の子供たちの中で当然のような遊びとして登場する「チェス」は現実世界と照らし合わせると多少なりとも違和感は感じるはずだ。これは、作中のアリスの行動を示唆するモチーフとして登場した「チェス」であり、この世界が非現実側である事を示唆しているのではないかと感じた。


≪海≫が佇む森の奥の平原から続く川を辿ったウチダ君が見つけた、この世界がウロボロスのようにループしている構造である事。これは丘の上に上がろうとするアリスが何度も家の前に戻される描写と同じだ。
お姉さんが投げた缶ジュースをペンギンに変換した様子を見せ、アオヤマ君に問いかける「この謎を解いてごらん、君にはできるか?」という挑戦状は、赤と白の女王の理不尽な質問「犬から骨を引くと答えは何か」と酷似している。


科学的に根拠がある事柄を組み合わせて解法を導き出すアオヤマ君にとって、未だかつてない経験だ。この理不尽さとは、前例が無く人知の域を超えている、ざっくりと言ってしまえば定義が無いものの答えを導き出せという部分にある。


これに関連して、お姉さんが絶食しても生きていられる描写は、先の理不尽な質問に答えられなかったアリスが受けた鏡の世界で受けた仕打ちと同じであり、またアリスはこれでも生存している。

 

このように、ジャバウォックに限らずキャラクターの立ち位置や世界の構造を含めて考えたところ、私は以下のような結論に至った。


・アオヤマ君が居る世界は「世界の果て」で、お姉さんが元々居た世界は「現実世界」
・お姉さんは「アリス」でアオヤマ君たちは「世界の果ての住人」


さらに根拠を補足していこう。

■≪海≫≪ペンギン≫≪ジャバウォック≫について
・海は現実世界と世界の果てを繋ぐワームホール
・ペンギンはそれを塞ぐ役割を持つ者。
・ジャバウォックはワームホールを広げる手助けをする者。
海が大きくなるとお姉さんの調子が良くなるというのは、元の世界が果ての世界を侵略してペンギンエネルギーの取得効率が良いからで、海から離れると体調が悪くなるのは元の世界から遠ざかりペンギンエネルギーの取得効率が悪くなるからと推測する。

 

■アオヤマ君を含む「果ての世界の住人」に対する違和感
スクールカーストを決定づける要素の一つとしてチェスを嗜んでいる子供たち。
・強いのはアオヤマ君とハマモトさんの二人だがクラスメイト全員が当然のようにルールを把握している事。
・客観的に考えて日本の小学四年生でチェスを嗜んでいるのはマイノリティ側だと思われる。(=違和感、鏡の国のアリスで登場する要素という点で現実世界ではないという示唆?)
・ハマモトさんが平原で浮かぶ水球を見つけた際に命名した≪海≫という名前。
・川があるのに海が存在しない街。
・一度も海を見たことが無いというアオヤマ君*2
・作中で電車を使った際も、お父さんとイオンの近くの喫茶店に行ったときも、一度も街の外に出ていない*3
アオヤマ君のお父さんは、「世界の果ては思ったより近くにあって、世界は裏返っている」といったこの世界の仕組みを理解しているかのような口ぶりをしている事、バスを使って街の外に出てアオヤマ君に対して海外のノート*4をお土産として買ってきている点などから、外の世界と行き来が出来る不思議の国のアリスで言うところの「服を着た白ウサギ」ではないだろうかと推測する。

 

■お姉さんについて
・海の記憶や実家の記憶、家族の記憶は現実世界で体験した本物の記憶。
・ある日「世界の果て」に迷い込み、ペンギンやコウモリを生み出す不思議な力を使えるようになる
・これはアリスの涙で洪水が起きたり突然身体が大きくなったり小さくなったりといったような、異世界では現実世界で起こりえない事象が発生する点と酷似している*5
・お姉さんはアオヤマ君の成長を見守りたいと言っていたように「果ての世界」に未練があり留まりたいと考えていた。
・その無意識が生み出した産物がジャバウォックで、それは意図的ではないにせよ「果ての世界」にとっては悪影響を及ぼすものだった。
・アオヤマ君のお父さんの海外のお土産同様、現実世界の物は「果ての世界」にも持ち込むことが出来るため実家の写真はアオヤマ君の手元に残っている。
鏡の国のアリスの12章では「どちらの夢だった?」という表題があり、これは「アリスの夢?それとも赤の女王の夢?」という問いかけである。ペンギンハイウェイにおいては「お姉さんの夢?アオヤマ君の夢?」と置き換える事が出来るだろう。

 

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一度しか見ていない事や、パンフレット未購入だったりもあって、ガバってる所があったらTwitterとかで適宜指摘してくれるとすごい嬉しいです。
全然関係ないけど、ジャバウォックってワードが出てきた瞬間に「喰らいつく俺の顎、引き掴む俺の鈎爪」って脳内で一生ボイスが再生されてて最悪だった、先グランブルでコンシードして欲しい。
観終わった直後は圧巻されてたけど、しっかりと自分の中で咀嚼したらすごく面白い作品だったと思えたので、タイミングあったらもう一度観に行きたいな。

*1:あのシーンでは髪の付け根や唇、おへそ等にフォーカスが合っていたため

*2:ウチダ君やハマモトさんも見たことが無い可能性?

*3:出れない?

*4:お姉さんが消えた後に喫茶店で使用している罫線の無いノート

*5:発生する不思議な事象は意図的だったり無意識だったりと様々

【恋は光】北代の求めた幸せとは

(※ 以下の記事には『恋は光』のネタバレを含みます、予めご了承ください)
 
 秋★枝先生は同人誌というものにハマる原因となった東方ジャンルで、かなりエモい話を書く人だなと記憶に残っていた作家さんで、TCG(MtG)にハマった頃に『Wizard's Soul 〜恋の聖戦〜』で商業作品として再開を果たし、作品群を追っていく過程で『恋は光』を読むに至った。
 
 この物語は主人公である西条が「恋というものを知りたい」という東雲に一目惚れをした事から始まり、幼馴染の北代やその知り合いである宿木たちが共に「恋」というものの定義や西条に備わる特別な体質「恋をしている人が光って見える」について解き明かしながら、それぞれ「恋」をして「恋」を見つけ出す物語だ。まずは作中に登場するキャラクターたちを今一度しっかりと分析していきたい。
 
 西条は思慮深くすべての事柄には理由や原因があると考えるタイプだ。それは、「恋」のように何が起こるか分からない事や行動原理に見合わない事象が発生すると混乱するという事の裏付けでもある。だが、その混乱する理由は、家庭環境で経験*1をする事が出来なかった事が大きい。だから本能的な愛情を深層心理では求めているのではないかと北代に指摘され、認めたくはないが納得はしていたようだった。また、彼という人間は自分という人間性をしっかりと棚卸し出来ていて、決して大学へ真面目に授業を受けに行く人間ではない事や、口下手だから文章で伝えたほうが齟齬が少なく済む事など、デメリットとなる部分をどう相殺すべきかを理解し行動している。そして、愚直なまでに誠実な彼は宿木と別れた際には喪に服す期間を設けたり、北代の告白に対しては彼女と東雲のどちらを選ぶかではなくそれと切り離して彼女と付き合うべきなのかを考えた。そんな彼だったからこそ、北代はずっと傍で片思いをし続けたのだろうし、宿木はその本質的魅力に気づいたのだろうし、東雲は「恋」をしたのだろう。
 
 みんな大好き北代さんは、人との関係性を何より重視していてとにかく気が回るし、そうやって上手く立ち回る事を苦とするどころか楽しみながら消化出来ている、そんなキャラクターだ。彼女は、センセと海に行く際に「二人でこんな老後を過ごせたら」と思いにふけていたが、これはどちらかと言えば「恋」というよりは「愛情」に近いが、なぜ彼女がセンセに対してそう思ったのかというと、長年片思いをし続けていた中で彼女の中で「恋」を勝手に消化していた為、ドキドキするような「恋」はもう終わってしまっていたのだ。最終巻で「恋って二人でしたいよね、やっぱ」と自分で言っていたとおり、西条が求めていたのは同じ速度で共に「恋」を出来る相手だったのだろう。
 
 宿木さんは作中で一番人間味にあふれているキャラクターで、「他人の恋人を奪うのが好き」という悪癖がバレた同性に対しては感情を包み隠さずさらけ出し、西条と付き合っているときも自己嫌悪で思わず感情が溢れ出したりと非常に生き生きとしている。前述した悪癖も、経験不足が故にとっていた本能的かつ利己的な行動で、西条と付き合い東雲さんに面と向かって涙目で「妬ましい」と突き詰められ、その後別れた際にはじめて「恋」という感情の重さに気づき*2今までの所業に後悔をして反省をする姿も描写されていて本当にかわいい。またPCDAを回すサイクルが非常に早く、本当に好きになってしまった西条と別れた直後には髪切って感傷に浸る……などではではく彼に好かれるために東雲に寄せると称して黒髪に戻して、彼に合う直前にはファッションも落ち着いたものに変えたり、東雲を別の男とくっつけて諦めさせようと模索したりと彼女なりに努力を重ねていた。作中最も恋する乙女をやっていたのは間違いなく彼女である。
 
 東雲さんは作品のテーマでもある「恋」を知ろうとする純粋無垢で思慮深く物事を探る西条と似たスタンスのキャラクターだった。そう、"だった"のだ。作中後半で宿木の男友達から告白を受け、それを自分の意思で断ってからの彼女はより「フツー」に近づきつつあり、自分の中の本能的な部分がより表面化し始めてくる。その要因は他ならぬ西条に対する「恋心」であり、それは根拠があったり定義があったりするものではない、「ただ、会いたい」や「西条が欲しい」といった理不尽に湧き出る欲求だった。その思いは眩しいくらいに真っすぐで、それは西条が初めて東雲さんと会ったあの日から根本の部分は変わらないけれども確かな変化だった。西条が探し求めて、未だ答えが見つからないそれは彼女にとっても同じで、それを二人で見つけて行きたいと願ったからこそ、彼は北代ではなく東雲さんと「恋」をしたいと思ったのだろう。
 
 自分は最終巻を読むまではずっと北代派*3だったし、北代との二人でやる最後の飲み会のシーンは色々な感情が湧き出た事も確かだ。しかし、西条が東雲と恋を見つけ出したいという答えには納得感があったし色々な人たちと関わっていく中で服装や行動が変わっていく東雲さんは非常に魅力的だった。特に告白のシーンでは作中で西条が反芻したように「頭の奥の方が甘く痺れた」*4という表現が的確であった、これは宿木の告白である「私と付き合ってみませんか?」という打算的な提案や、北代の「好きだよ、ずっと」「ちゃんと、好き」といったような積もり積もった長年の想いを伝える行為でもなく、「ただ、西条さんが欲しいのです」という理屈じゃない本能的な欲求を自分にぶつけられたからこそより強く惹かれたのだろう。
 
 作中で北代はセンセと結ばれる関係にはなれなかった、しかしそれ自体が不幸なことだとは思えないのだ。ただ、北代と西条があの居酒屋で二人で飲む事はもう無いのだなと思うと泣きたくなるくらいに寂しいと思う。男女の関係とも同性の関係とも、はたまた友情とも違う、二人の間だけで「何か」があの空間では形成されていたと自分は思う。そして、北代が求めていた本当の幸せとはきっとその「何か」だったのではないか。だが、それは西条が求めた「恋」ではなかった、だから彼にとって「特別」な彼女は「恋」をする対象に選ぶ事が出来なかった。きっと西条と東雲はこれからそれに代わるような幸せな時間を、空間を作っていけるはずだと思う。だがあの奇跡のような時間であった「何か」を彼は、そして北代はもう二度と手に入れる事は出来ない。だからあの時、彼は「寂しい」という想いが頬をつたったのだろう。
 
 今でもこの作品を何度も読み返してしまうのは、キャラクターが魅力的で、独特の会話のテンポが心地よくて、そしてあの北代と西条の居る居酒屋の風景が見たいからなのだろう漫画という媒体は記録されたキャラクターの過去のやりとりを見る事が出来る貴重な表現の方法だ、そしてそれとこの作品は非常にマッチしていて、まるで自分が学生の頃に楽しかった記憶を追体験出来るような、そんなエモい感覚*5を味わえる。
 
 秋★枝先生の新連載が楽しみだし、こうして待てる時間があるのだから、現世もまだまだ捨てたもんじゃないなと思えるなと思った今日この頃。
 

 

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*1:彼のキャラクターで言うならば「学習」

*2:ここではじめて自覚するというのも宿木さんらしい…

*3:ちなみに何周もした今は宿木派

*4:この表現は作中で最も秀逸だと思う

*5:同じくらいに好きな作品に『げんしけん』がある、あれは自分の感性に多大な影響を与えた

【HearthStone】ラダーのデッキ選び

 ここ数年ハースストーンやシャドウバースをやっていて感じたのだけれど、自分は短時間で難しい計算をする事があまり得意ではない事。だからミラクルプリーストやリノエルフみたいなテクニカルなデッキは上手く回せなかった。そもそも苦手って言ったって公式(リノ算みたいな)を覚えれば簡単な話やんって言うし、自分もそう思うんだけど挑発(守護)込みの計算とか火花魔導士の効果込みの計算になると途端に分からなくなるわけですよ。んで、こういうのって正直向き不向きがあるし、みんながみんなkolento氏*1みたいに瞬時に正解を導きだせるわけじゃないわけで。それを言うと計算をした結果、このターンがリーサルじゃない時にどう手札を掃くか、盤面やライフを調整するかを考え直さなければならない。となると、リーサルかどうかの計算時間+普通の思考時間の両方を制限時間内にしなければならないので全社の計算時間は兎に角短くないとダメなのである。さらに言うとリーサル計算ではキャントリップで引いた札によって左右されるものもあり、かつそのキーカードがデッキの中に何枚あって……それをキャントリップで引ける確率が……そもそも賭けに出ない方が結果的に勝てる確率が高いのでは…とかいくらでも考える事があるのだ。
 
 ここでどうするかというと、「使えるように練習する」そもそもそういう事に左右されないデッキを使う」の2択だ。ここの分かれ目は「練習すれば使えるようになるかどうか」ではなく「自分が練習した労力に見合うだけの費用対効果があるかどうか」だと思う。極論、練習すれば使えるようにはなるだろうけどトップになる事は難しいであろうという事が分かっているのなら恐らくそのデッキタイプを使う事に向いていないし、練習は辛く勝てない時のしんどさも相まってつらみがあるあだろう。しかし、逆に連取は楽しいしこのデッキタイプを使う事に快感のようなものを感じるのであればひたすらに回して練度を向上出来るのだろう。
 
 結局「流行ってるから使ってみたいな」とか「強いらしいから使ってみたいな」って感情と実際に使ってみた後に感じる体験っていうのは全く異なるよね、っていう当たり前の話に落ち着くなこれ。基本的に選択肢が多い事は素晴らしい事なんだけど、その分正しい選択肢を選び抜くスキルが自分に無いとダメだよね。あと最近の翡翠ドルイドとか使ってると分かると思うけど、多少ミスってもアドバンテージの暴力でどうにでもなるって話。一つのミスが負けに直結するデッキを使う事は非常にハイリスクで、それできちんと勝てる人っていうのは本当に上手いプレイヤー。
 
 今回なんでこの記事書いたのかっていうと、自分の立ち位置は把握しておかないと自分がつらい体験をするハメになるよねって話。これってネガティブな面だけじゃなくて、選択によっては自分の強みをより生かせるものもあるって事だからね。例えばアグロデッキに必要なのは盤面の有利トレードだけじゃなくて、ライフを詰める事によって生まれるアドバンテージだったりするけれど、コントロールデッキが得意な人にはこれが苦手なパターンが結構多かったりする。これも先の(自分からしたら)難しいデッキを使うための練習が必要になるけれど…(以下略)ってなるわけです。だからそういう人は得意なデッキタイプを使う事に専念したほうが楽しいし勝率も稼げることが多い(メタゲームがそれを否定する事はあるけれど)。
 
 とはいえ向き不向きに関わらず練習は必要だから、きちんと頭を使って練習をして楽しく遊べるようにしたいよねぇ。
 
 

*1:HearthStoneめっちゃ上手い人、この動画観るとすごさがわかると思う

www.youtube.com

緑のルーペ先生が描く「つらい作品」たち

自分は緑のルーペ先生の作品が大好きなのだけれど、なんで好きなんだろうって思った。
 
初見は「イマコシステム」だった、ざっくり言うとほんのりおかしい感じの低身長の眼鏡っ娘ヒロインNTRれてる(ような)描写が多い作品。次は「ブラパ!」だった、これも世間からズレた人たちの話だった。今度はKindleでセールをしていた事がきっかけで知った「こいのことば」だった、お祭りはずっと続かないし、終わりは分かっているけど非日常から日常に戻る過程は切ないよねっていうお話だった。「ガーデン」はそれはもう、ほんとうにすごかった、イマコシステムで見えた危険な部分の上澄みだけを抽出して煮込んだような作品だった。合間に同人誌が挟まったりした、宇宙人だったりエラーだったり。そして、「青春のアフター」が始まった。
 
これはもう凄かった、一話からグサグサと刺さる痛さ。このエグさは実体験で近いものがあればあるほど刺さる痛さだった。最近完結したので興味がある人はぜひ購入をおすすめする。
 
このつらい作品たちに魅了された一人として、それらの作品たちから感じ取れたものや気づきを羅列していこうと思う。
 

【後半ネタバレあり】ChronoBox 感想、評価、考察

 
※リンク先R-18注意 
 
知り合いがおすすめしていたので前から気になっていた作品。
購入して帰宅後にインストール→プレイ→翌日会社から帰る→ずっとプレイ…といった具合で2日間で完走。
振り返りながら考察(妄想)なんかも入れつつ行きます。
 

■プレイ前の印象

以前Web体験版をプレイしていて思ったことは、新規層を狙いつつも中々凝ってるゲームだなぁという印象だった。
スマートフォン上でも動く体験版っていうのは中々斬新で、
正直エロゲ業界(というよりは声付き紙芝居というフレームワーク)って進化しようが無いじゃないですか。
昔と違って若年層オタクはPCが無くてもスマートフォンとyoutubeでゲーム実況見て満足するような世界なわけですよ。
仮にエロゲに興味があってもOPムービーをyoutubeで見て気になった作品のHPを見たら体験版が配信されてる事を知ったとしても
「体験版を遊ぶためのPCが無い」ってなるし、古いオタクですら「PC起動して体験版インストールしてゲームやるの面倒くさい(スマホで日常生活を送っているため)」ってなるわけですよ。
それがこの作品の場合はWebブラウザ上で体験版が遊べるんです
これって本当にすごくて、ここで体験版やって内容が良ければ「やっぱ面白いわ、久しぶりにPCでエロゲやるか」ってなるわけですよ。
 

★評価点

■露骨な伏線の匂わせ方

いやだってもうホームページのキャラ紹介からして、見るからに伏線だらけだもの。
「キャラに振られてる番号なんの法則性があるんだ?」「こいつ死にそう」「うーわこのセリフ意味深」「なんで教室の窓に鉄格子があるの?」「自室にスピーカーって何さ」「霍かわいい」etc...
みたいな事を思いながらプレイする事になると思います。
制作者も公言してますが、作中の謎は8~9割方回収されるうえに比較的速読気味にプレイしてる自分ですら
重要そうなポイントをしっかりと抑えていればわざわざ振り返らずとも一週目で"すとん"と落ちてくる清々しさがあります。
また、伏線ではなく物語の進行上「ん?どういうことだ?」と思った部分が比較的早めの段階で回収されるので
疑問を頭の片隅に抱えずとも、点と点が即座に繋がり物語に集中して次の疑問点や伏線へ集中出来るのがとても良かったです。
これが、トーリー全体のテンポを良く感じた理由の一つなのかもしれません。
ちなみに若干の謎が残る部分はありますが、物語の根幹に関わるクリティカルな投げっ放しな感じではないのでそこも良い点だと思います。
本来の意味での「ユーザのご想像にお任せします」というやつだ。

 

■シナリオ進行中の気持ち良さ

人間って成功体験があると気持ちいいんですよ。
例えば根拠を持ってクイズに答えて正解すると嬉しいじゃないですか。
この作品はそういう気持ち良さが各所にちりばめられてて、かつ短いスパンで何度も味わえるんですよ。
なんですけどね、この作品の秀逸なところは企業のキャンペーンクイズみたいな「あからさまに答えが分かる」ような感じのものではなくて「自分の察しがいいから察せた」ように錯覚出来るんですよ。
自分で謎に立ち向かってる感覚が積み重なると0%だった情報が10%、20%と徐々に積み重なっていくんですが、どう頑張っても終盤までは60%止まりになってしまう。
そして憶測で80%(仮)まで持っていったところで答え合わせをすると気持ちよく90~95%の正解にたどり着けるわけです。
 

■エロい

エロい、予想以上にいろんなシチュエーションが用意されていてすべての性癖をカバーしているのではないかというレベル。
シナリオ重視のエロゲってわりとエロシーンに力入ってなかったりする事が多いんですが、普通にこっちメインって言われてもおかしくない(※本来エロゲとはこういうものです)
ただ行為中の会話やCGにも伏線があったりするのでたまに集中して読まないと損をする場面もあるので要注意。
 

■グロい

グロい、耐性が無いから余計にキツかった。
グロいの種類にも色々あると思うんですが、「露骨にグロいタイプ」と「エグいタイプ」の「グロい」が両方混じってて相当きつかった、一部のシーンは目を背けながらプレイしてたくらい。
好きな人にはたまらないのかな…(そういう趣向が無いからわからない)
 

★悪かった点

■マップ選択のインタフェース

マップ選択のインタフェースが分かりづらい…というよりは直観的ではない。
恐らくスマートフォンの操作でスワイプした時の動きを想定したと思うのだが、
実際の本編はPC上で動くため右の矢印を押下したら右側に遷移するのが自然だと思う。
この部分は本当にストレスだった。
 

■日常パートの掛け合いが一部メタくて寒い

あまり多くは言わないけど自分はかなり寒く感じた(しかも結構な頻度で似たようなやりとりがある)
 
 
続きから考察(ネタバレ注意)