緑のルーペ先生が描く「つらい作品」たち
自分は緑のルーペ先生の作品が大好きなのだけれど、 なんで好きなんだろうって思った。
初見は「イマコシステム」だった、 ざっくり言うとほんのりおかしい感じの低身長の眼鏡っ娘ヒロイン がNTRれてる(ような)描写が多い作品。次は「ブラパ!」だった、これも世間からズレた人たちの話だった。今度はKindleでセールをしていた事がきっかけで知った「 こいのことば」だった、お祭りはずっと続かないし、終わりは分かっているけど非日常から日常に戻る過程は切ないよねっていうお話だった。「ガーデン」はそれはもう、ほんとうにすごかった、 イマコシステムで見えた危険な部分の上澄みだけを抽出して煮込ん だような作品だった。合間に同人誌が挟まったりした、宇宙人だったりエラーだったり。そして、「青春のアフター」が始まった。
これはもう凄かった、一話からグサグサと刺さる痛さ。このエグさは実体験で近いものがあればあるほど刺さる痛さだった 。最近完結したので興味がある人はぜひ購入をおすすめする。
このつらい作品たちに魅了された一人として、それらの作品たちから 感じ取れたものや気づきを羅列していこうと思う。
■いびつなあいのかたち
ルーペ作品のどれもが恋だったり愛の話だ、 でもそのすべての愛は歪んている。近親だったり、偶像だったり、逃避だったり、無知だったり、 異種だったり、偏執だったり。
どれもが"普通"ではないのだ。だからこそ、話に惹かれてしまう。
ふわふわとした本能的な危険性を感じるのに、 それを具体化して作品の中の彼ら彼女らを批判出来ない、 そんなもどかしさがあるのだ。それはきっと、 普段抑圧している倫理的な面で口に出したり行動に移せないような 事を彼らがしているからだ。
だからきっとその「度し難い」感情の正体は"羨望"なのだろう。その非日常感を味わえるのがルーペ作品の魅力だと思う。
■どきゅんのひとたち
不良だ、不良がいるのだ。
それも憎めない感じの、 必ず要領が良かったりする人として面白くて良い奴らが多い。
DQNっていうのはスクールカースト最上位だ。これはスクールカースト下位層に居た人間にしか分からない感情か もしれないけど、僕らにとってその存在は兎に角輝いて見える。僕たちに出来ない事を当たり前のように、嫌味っぽくなくこなし、 人望も厚い。自分が言ったら引かれるような行動や言動も、 彼らが言うと周りの空気が明るくなる、 すべてが上手くいっているように見えるのだ。でも自分はどうやっても彼らにはなれないし、彼らのような「 ガキ」っぽい奴らにはなりたくない、 でもすべてが彼らのように上手くいかない。だから僕らは"恨めしい"と感じざるを得ない、 でもそれは自分がそれ相応の努力を怠ってきたツケの結果で「 ガキ」なのは自分のほうだなんて事は当時は気づきようが無い。
だから今さらになって気づく、 彼らは忌み嫌われる人たちじゃない、 なるべくしてなったヒーローだったんだ、と。そして実際にきっかけがあって話してみると分かる、 本節2行目のような人が多いことに。( もちろん全員がそうってわけじゃないけど)
そういった体験が共感に繋がり、 より話に惹き込まれるのかもしれない。
■みりょくてきなひろいんたち
ルーペ先生の女の子が「にへらぁ」って笑う顔が好きなんじゃ。みんなどこかがおかしいヒロインなんだけど、そこが最高。
ここ最近だと唯一まともな一般人だと思ってたみい子も、最終話で色々かましてくれやがりまして……まともな人生を歩む事を選んでいたらそういう発想や行動には至らないと思います。でも、そういうみい子らしいところが……大好き……。 可愛いよ、みい子可愛い。みい子の話しかしてねぇ、 えーっと基本的にルーペヒロインズはみんな純粋無垢でどこかがお かしい、そんなキャラクターなんです。
「そんな人たちどこにもいない」って思うだろうけど、 だからフィクションで存分に堪能させてもらいたいっていう話よ。
■だめなおとこたち
主人公から大人のひとたちまでダメな男が本当に多い。自己投影できちゃうからやめて欲しいよね!(うそ、 もっとやって)
くすぶってたり、ヘタレだったり、 そんな人たちの発言は基本的にイライラする事が多いんだけど、 たまにグサッと共感してしまいそうになるものもある。
青春のアフターのまことが放ったこの台詞がとても好き。
「どうしても忘れられない片思いしてるヤツはどうしたらいい?レースのスタートラインに立てないやつは?死ねっていうのか?」
直後に倉橋にぶん殴られてるけど、 実際ぶん殴られて当たり前のこと言ってるよね、 今はもう結婚間近のみい子が居るのに。でも理屈じゃなくて感情的な部分をさらけ出している(= 一般社会から見たらガキの言動・行動)だけで、 これって倫理的にはアウトなんだけど誰もが一度は思ってしまうよ うな事を言語化してるだけだったりもするから全否定も出来ない。先のヒロインの時も似たようなこと言ったけど、 キャラクターがイノセントなのがルーペ作品の色なのかもしれない 、(社会的には)方向が間違ってたりすることもあるけど。
男って基本バカだからいくつになっても精神が子供なんだよね。
そういうところがつらいよね。
■さいごに
いや、もう本当に最高です、あなたの描くお話がもっと見たいです。同人誌も一部買い逃したものを除いてほぼ読んでいます、こっちも最高。
あ、あとですね。C92で頒布される「青春のアフターif」 は本編では描かれなかった"もしも"のお話、 きれいに終わった本編があるからこそ別の可能性を見たくなるって いうのが同人誌やアンソロジーの基本だよね。まだ本編を読んだことが無い人は、8/ 10に最終巻が出る本編と合わせてぜひ一気に購入しよう!みんな、買おう!(ダイレクトマーケティング)
ブラパ THE BLACK PARADE(1) (ヤングガンガンコミックス)
- 作者: 緑のルーペ,フジワラキリヲ
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2012/04/25
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ブラパ THE BLACK PARADE(2)(完) (ヤングガンガンコミックス)
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